第14章 帰還
「さゆちゃん、昨日帰ってきてたぞ。」
「は?」
そんな会話をしてから1日が経った。
つまりはあいつが木の葉に帰ってから2日。
いまだ俺のところにはあの声と言葉は届いていない。
「ゲンマ、貧乏ゆすりやめろって」
ライドウに言われて初めて自分が貧乏ゆすりをしていたことに気づく。そのくらい、もう頭の中にはぐるぐる同じ言葉が巡ってた。
なんで俺だけまだ会えてないんだよ…
ライドウ、アオバ、エビスさんは帰った初日に会ったらしいし、その話を聞いた後、家に行ったときには「火影様のところへ行った」とうちはサスケとカカシ上忍に告げられた。てかなんでカカシ上忍は家の中に居たんだよ…。
その後も任務が入ってしまったり、上忍待機室に行っても紅やアスマに「今出てった。」と言われてしまったり、見事にすれ違って今に至る。
「まぁ、そのうち会えるって。木の葉には居るんだしさ。」
「そうそう、避けられてるわけでもあるまい。」
「さ…」
「あ」
「バッカ」
口へ運ぼうとした卵焼きを落としたオレを見て、向かいでは口を滑らせたとアオバが顔を曇らせる。
くそ…
薄々、薄々自分でも思っていたところを突かれ胸が苦しくなる。
これだけ会おうとしてるのにことごとくすれ違うなんて、いや、でも俺あいつになんかしたか?してない筈。ちゃんと笑顔で送り出したよな?いない間も変な噂が流れるようなことはしていない。
「くそっ。残り適当に食ってくれ。ごっそさん。」
「あ、おい…」
イライラとしながら自分の分の代金を机に置くと2人の制止も聞かず店を出る。
ふと、さゆと打ち解けるきっかけにもなった丘への道が視界に入った。
「……久々に行ってみるか」
あそこなら基本人もいない。
それに、それにもしかしたら、さゆがいるかもしれない。