第14章 帰還
サスケに新しい技を教えている時だった。研ぎ澄まされた状態の五感が木々の揺れる音を聞き付ける。ふっとそちらへ顔を上げるが一向に気配がつかめず、木々の音ですら、自分より1秒遅れてサスケが気づくほどに小さかった。
本をしまい、サスケがポケットへと手を伸ばした瞬間、気配を抑えるのをやめたのであろう。視界がそいつを、否、彼女を捉えるよりも速く、胸が高鳴るのを感じた。
「ただいま!!!」
目を見開くと、腕の中に飛び込んでくるその人は太陽を背にしているからかとても眩しく見え、けれどもその存在から目をそらす事はできなくて。男2人で足にチャクラをためて何とか彼女を、少し後ろへよろついてしまうほどの勢いを受けとめる。
「よかった!!2人一緒にいて!会いたかったよ!」
抱きついたまま、サスケの頭をわしゃわしゃとなで、俺の背中をバンバンと叩く彼女に、なすすべもなく、というよりも頭が追いつかず、されるがままになる。
「ね…姉さん…?」
「うん。え?やだ忘れちゃった?」
「いや…」
普段は他人に対して仏頂面のサスケもさすがに驚いたのであろう。口を半開きにしたまま目をパチクリと瞬く。
わかるぞ。俺もまだよく状況がわかってない…
「カカシさん。」
名を呼ばれ、「はい」なんてマヌケな返事を返すと、彼女の顔がすぐ近くにある事をようやく脳が理解する。理解して、体が足元から一気に熱を生む。
「ただいま。」
にこりと笑うその顔は、記憶にある彼女よりも大人びて、オレの愛しい女の子は女性へと変わったのだと、ガツンと殴られたような衝撃が胸を締めつけた。
「……おかえり。」