第12章 小休憩
食器を下げると、まぁいいか行ってくると手を振る2人をさゆと見送る。
「オレらも待機室でも行くか。」
「手ェ出しちゃいますか?」
「お前あんまり変なこと言うとあとで俺がカカシ上忍から睨まれるから勘弁してくれ。」
「ゲンマさんも大変ですね」と他人事のように笑うさゆを見ていると、不思議と穏やかな気持ちになってくる。
こいつの本音を聞いたあの日から、さゆの横にいるのが段々と心地よく感じるようになった。
見かけるたびに話をしたいと思うようになった。
だから正直、第三者から仲が良いと言われると気分が良い。
「なんかゲンマさん、今日機嫌良いですね?」
「ん、そうか?」
「なんとなくですけど。」
なんか良いことありました?と微笑むその顔は、ちゃんと俺に向けられていた。
適当に雑談をして、待機室の書類整理をして、ちょこちょこと細かいお手伝いに駆り出され、その日は帰宅となった。
……………
ー……んマ……さ……
ーーゲンマさ………
ーーーゲンマさん…
ああ
落ち着く声だ…
この声をよく知っている。
声の主を思い浮かべればそいつは違和感もなく、いつの間にか目の前に立っていて、暗くぼやけた中でも微笑んでいるのが理解できた。
ああ、その顔だ。
俺に向いてほしいと思っていたのは
いつでも見たいと思っていたのは
頬に手を伸ばせば、優しく彼女の手が重ねられ、目元をなぞればくすぐったいと笑う。
ゆっくりと顔を近づければ目をつむりそれを受け入れる。
軽く触れていた唇が離れたところでハッキリとその顔が認識できた。
「さゆ…」
一瞬のブラックアウト。
「抜け出していた魂が身体に戻ったぞ」と寝ぼけた頭が告げるがそんな筈はない。
夢だ。
夢を見ていた。
さゆと恋人のように、愛しそうに触れ合う夢を。
夢は自分の深層心理を見せるなんてどこのどいつが言ったんだ……
夢は夢だ。
だからこれはそういうんじゃない……。
………はずだ。