第11章 五里霧中
「お二人とも本当にありがとうございました!」
「どういたしまして。」
買い物を終えて今はさゆの玄関の前。
1人で持ち帰るのは大変だろうとカカシ上忍とにらめっこしながらも荷物をみんなで分けて持ってきた。
「せっかくだからお二人とも食べていきますか?」
荷物を掲げるさゆは狙っていた特売品が全部買えてテンションが上がっているようだ。
カカシ上忍がいるのはさておきこいつの作る料理には少し興味がある。
というか家の中を見てみたい…
じゃあ…と言いかけたところ突然、ガシッと肩を掴まれた。
「いーや。今日は丁度ゲンマと飲みに行く予定だったから。な!」
「え?そうだったんですか?」
被せるように、してもいない約束を口にされる。
はいはい。行くなってことっすね。
「悪いな。そういう事だ。」
苦笑いをしながら誘いを断ると「ではまた今度ぜひ」と少し残念そうに笑った。
カカシ上忍がいるからだろうか?
あの後から今まで見た事なかったさゆの色々な表情を見る。
ライドウたちはこんな顔を見た事たあるんだろうか。
……ありそうだな。
だとしたら俺はようやく友人としてのスタートラインに立った訳だ…。
「じゃあ、サスケくんもお腹すかしてると思うのでこれで。」
「ああ。」
俺たちから荷物を受け取ると顔を上げたさゆと目が合った。
あっ…
笑った…。
それだけ。それだけのはずだ。
それなのに加えていた千本をうっかり落としそうになるほど見惚れてしまう自分がいた。
「ゲンマさん。」
名前を呼ばれてハッとする。
今どのくらい時間が経っていたんだろうか?
一瞬だと嬉しいんだが…
「ゲンマさん、カカシさんも、本当にありがとうございます。」
にこりと笑うその笑顔はよく見た営業スマイルとは違う。
ライドウたちに向ける楽しそうなものとも
2人のとき見たイタチを想う微笑みとも
今まで見た中で1番、迷いのない強い意志を感じるその笑顔に胸が掴まれるような感覚を得た。
「じゃあ、また。」
「…ああ。」
見惚れてしまったのはどうやら俺だけではないらしく、隣のカカシ上忍も揃って間抜けな返事をしている。
さゆを受け入れ、パタンと閉まったドアをしばらく2人で無言で眺めていた。