第11章 五里霧中
「ゲンマさん?」
さゆが驚いたような顔をし、それはみるみる赤くなっていく。
やっとこっちを見た。
「ゲンマさん、あの….その、手…」
顔を赤くしたままさゆが目を泳がせる。
この表情を俺が作っているのかと思うとそれだけで俺の心は満たされた。
なんだろうか、この言われもない満足感は。
「…お前がどんな選択をしても、全部受け止めてやる。お前がイタチを選んでも、木の葉を選んでも、そこにあるお前の気持ちはちゃんと全部、俺が見てるから…」
泳いでいたさゆの目がまた俺を見る。
先に見た恐怖を含んだ目とは違う、その目はまっすぐな目で俺を捉えていた。
そう、それでいい。
「お前はちゃんと、自分で答えを探すといい。」
こいつの感じることを知りたい。
こいつを見ていたい。
自分のこの気持ちがカカシ上忍の言うようなものなのか、まだわからない。
それでも
今度はこいつの事をちゃんと知っておきたいと思った。
こちらを見る目が一瞬揺れたかと思うとさゆの表情が崩れた。
「………っ……ごめんなさい…」
「いや…」
「ありがとう…ございます……」
どうしたもんかとオロオロする俺の手にさゆの手が添えられる。
顔を伏せてしまったので表情は読めないが、微かに手に込められた力や震える声に胸がまた締め付けられた。