第11章 五里霧中
「さゆか…?」
人が近づいてくる気配には気づいていたけど、通り過ぎるだろうと思っていたから声をかけられて驚いた。
振り返って声をかけてきた相手がゲンマさんである事に気づいてもっと驚いた。
「ゲンマさん…?」
今日はどうしたんだろうか?
何か良い事あったのかな?
それともまさか本当に同情されているというか気を使われているのだろうか?
でもそんなこそするような人じゃないだろうし…
「……またその顔か。」
「え?」
「隣、いいか?」
「え?あ、はい…」
眉間にシワを寄せたゲンマさんが本当に隣に座ってくる。勢いでハイとか言っちゃったけどぶっちゃけちょっと怖いな…
…しかも割と近いし…。
「……どう思ってるんだ?」
「はい…?」
不意に問われ顔を見るとその目は私を見てはいなくて、ぼんやりと夕焼けに染まる里を眺めていた。
「さっきも今も。同じ顔してた。」
「あぁ…ごめんなさい。」
「いや…あーくそっ。」
ゲンマさんが頭をガリガリとかく。
えっなに?軽く逃げたい。
「…謝らなくていい、個人的になんとなく気になっただけだから。良かったら教えてもらいたいっつーか…」
顔を口元を覆いながらぎこちなくそう言うゲンマさんは、とりあえず怒ってるわけではないようでホッとした。
こんなゲンマさんは初めて見るな。
そもそも私、この人についてよく知らないからな…。
お互いそうだろうけど、ライドウさんやアオバさんに聞くゲンマさんと私の中のイメージがちょこちょこかみ合わないのはそのせいだろう。
……少し踏み込んでみようか…?
「………正直、ゲンマさんに嫌われてると思ってたんで、さっきも今もこんな風に自然に声かけられるなんて思わなくて驚いたんです。」
これ以上関係悪くなるもクソもないだろうと思い言ってしまった。
なんていうか、この雰囲気なら言える気がして。
「……俺に嫌われてる…?」
「違いますか?」
「いや…なんでそんな…あー」
ゲンマさんは1人頭の中で色々と考えているようで歯切れが悪いが見る限りそこまで嫌われてはいなかったようだ。