第1章 幸せの黒猫
「久野さんね。…未経験かぁ〜、まぁ徐々に慣れてってもらえばええか。久野さん制服のサイズは…Sで大丈夫そうだけど大丈夫?」
「あ、ハイ大丈夫です。あの…よろしくお願い致します!精一杯頑張ります!」
胸に熱いものがこみ上げた。
まさかのまさかで働くことが決まったみたいだ。
「あ、申し遅れてしまったね。僕はここの人事部長の村上です。ハイこれ名刺ね。制服が届くまで私服でかまへんから。あ、ちょっとごめん。」
そう言って内ポケットかバイブ音がする携帯を取り出した。
「はい、エイタニティ株式会社、村上です。
はい。
はい。
おたくね、面接の時間勘違いとかありえへんからね。今回ウチとはご縁がなかったということなので。はいー。」
(もしかして元々面接する予定の人だよね?)
(なんかごめんなさいお仕事奪っちゃって…)
「あー、スマンスマン。で、何の話やって?」
「制服が届くまでは私服で大丈夫ってとこです。」
「そうそう。大体1週間くらいで届くから。あーとーは、連絡先教えてくれる?」
そう言いだし、また携帯を取り出して番号を見せつけた。
ここに掛けろという意味だろう。
「これに掛ければ良いですか?」
「そういうこと。久野さん、下の名前は?」
「めぐです。久野めぐです。」