第2章 指先の赤ペン
「久野…めぐっと。
今は…8時10分っと。
これ、どうしたらいいですか?」
「そこ貼っときゃヒナがどーにかしてくれるやろ。
あいつまだ来とらんみたいやし。」
「ヒナ…さん。女性の方がいらっしゃるんですね!
今のところ男性の方としかお会いしてなかったので安心しました。」
「ヒナちゃんってね、村上ぶちょーのあだ名なんだ〜
まぁ僕は村上くんって呼んどるけどね!」
「む…村上さん?!」
(まさかの村上さん…)
(女性ならランチ一緒に行けるかもって、期待したのに…)
「ほな、ちょお付いてきてや。一通り案内したるわ。」
渋谷課長が申し出てくれた。
「あ…ご迷惑じゃないですか?」
「ヒナに案内とか簡単な仕事内容説明しとけってさっきLINEはいっとったんや。
あ、ヤス~、この間のモデルルームのチラシ企画もう一回練り直しといて~。
さ、行くぞ。」
部屋の奥からなんだかぶぅたれる声が聞こえる。
きっとショウタさんだ。
(モデルルームって、もしかしてこの間のバイトのところかな)
(後で聞いてみよう)
(あ、ペン返してない…)
(折をみて、良いタイミングで…)
色々なことを瞬時に考えて、先に歩き出している課長の後を付いていく。