第2章 指先の赤ペン
気持ちがどよんと沈んでるところへスマホの着信音が鳴った。
画面を見ると『村上さん』との表示。
「はい久野です。」
憂鬱がバレないように少し明るめのトーンで電話に出る。
「あ、久野さん?おはようさん。無理して明るい声ださんでもええんやで?」
(村上さんエスパー⁈)
「なぜ分かったんですか?!」
「ってほんまに無理してるんかい!ただの冗談やったんに。なんや緊張しとるんか?それとも変な夢でもみたんか?」
(…エスパー⁈)
「り…両方です…初めてなので…わたしに務まるかどうか不安なんです。」
「はじめは誰もがそうや!心配しなさんな!どーんと構えてれればええんよドーンと!ほんなら会社で待ってるから、キチッとシャキッとして来いよ。じゃ!」
一方的に話して一方的に切られてしまった。
まぁ時間のない朝だ、だらだらと喋られても困るのでこれはこれでよしとしよう。
レーズンパンとサラダを胃の中に収め身支度を整える。
壁に貼り付けた猫のポストカードに行ってきますと目配せて玄関の鍵を閉めた。