第2章 指先の赤ペン
翌朝。
私は昨日のことを何度も夢でみた。
黒猫を追いかけていきなり落とし穴に落ちて目が覚めて。
また眠りにつくと今度はアリスみたいに小さくなって猫のドアを通る瞬間大きくなって苦しくて。
ほかには小道に入ったけど迷路みたいで抜け出せなかったり、電話越しに私の仕事盗ったよねと攻め続けられたり…
起きた時、心地よい目覚めとはかけ離れていた。
(初日だけど大丈夫かな…)
(寝た気がしない…)
(寝る前より絶対疲れてるけど気のせいだよね…)
モンモンしながら昨晩買っておいたレーズンパンとサラダをテーブルに置く。
(私服ってどんなの着てけば良いのかな…)
(とりあえず黒のパンツがあるし、上は…ブラウスにカーディガンで上等だよね)
今日のコーディネートを考えながらパンを頬張る。
(通帳と判子は昨日用意しといたから大丈夫だし)
(私、勤まるかな…続けられるかな…)
(どうしよう不安になってきちゃった…)
(胃がチクチクする…)