第9章 失ったモノ
武「じゃあ、いろいろ質問したりするけど、
リラックスして答えていいからね。
答えたくないこととか、わからないことは、
答えてくれなくてもいいよ。」
いつもと変わらぬ笑顔でいう。
こくりと頷くと、名前を確かめられたり、
ここは何処にいるのか、などと基本的なことを聞かれた。
武「じゃあ、次は手を動かしてもらってもいいかな?」
掛け布の上に無造作にある手を眺める。
まるで自分のものじゃないみたいだ。
動け、動けって思いながら、指先にチカラを入れる。
キツくこぶしを固めたつもりがゆるゆるとして
力が入らない。
そして開くときに、骨がキシキシと鳴る。
こんなに、3日とかそこら動かさないだけで
こんな風になるんだ。
いつも使っているからそんなに意識はしない。
何度か動かしていると、
武「ちゃんと動くんだね。痛みとかもない?」
こくりと頷くと、武田先生は岩泉さんを呼び寄せた。
岩泉さんをベットの隣に立たせると、私の手を取らせた。