第9章 失ったモノ
える
「える!起きて!える!」
真っ暗な闇に佇む私に
はっきりとした声が響いてくる。
それは空から降るようで、頭の中に響くように。
(呼ばれてはいるけど、そっちに行く方法がわからないの。)
目は開いているのに、何も見えなくて、
その場に座り込む。
なんとなく伸ばした手は空を切るだけ。
上を向いた瞬間に眩しい光が目を刺す。
そのとき、ふわりと温もりが身体を包む。
なんだか嬉しくて淋しくって
笑っているのに涙が溢れた。
「光に向かって手を伸ばすと、誰かがとってくれる。」
そう口にして、温もりを求めて光に手を伸ばす。
伸ばした手は誰かに引かれて、身体が引き上げられる。
あいた手で涙を拭って、手の先に微笑みかけた。