第9章 失ったモノ
える
ガチャ、ガチャガチャガチャ
無機質なドアノブを回す音が響く。
「自分の部屋なのに、入れないとか…」
押しても引いても開かない扉は施錠されているようだった。
下に降りて、いつもの広間へ向かった。
台所を覗いて、あるものを確認する
(ご飯は、炊いてあるみたいだし、
パンもあるし、適当に作ればいいかな)
卵、牛乳、塩胡椒。
簡単すぎるそれは、あっという間にできた。
トーストしたパンにバターを置き、
スクランブルエッグとトマトを皿に盛り付ける。
うん、おいしい。
なんだか酷く久しぶりに食べた気がする。
一人きりで大きな広間で過ぎたお昼ご飯。
「早く帰ってこないかなぁ…」
少しだけ寂しかったんだ。