第8章 狂気
No side
及「えるは、特別なんだよ。
俺にとっても、みんなにとっても。
そんなえるをさ、傷つけられるのってたまんないじゃん。
岩ちゃんが怖い顔してたのもさ、
俺と同じ気持ちだったからじゃないのかな。
国見ちゃんの気持ちのケアも必要かも知んない。
不本意だった。ってことで片付けたくないけど、
ああなるのが国見ちゃんだっただけで、
俺らの他の誰かがそうしてたのかもしれない。」
苦虫を潰したような顔をして、及川は続けた。
及「だけどやっぱ、ふざけんなって、
なんで止めれなかったって、一発殴ってやるべきだよ。」
加速する気持ちとともに声音も荒くなり、大きくなっていく。
及「だって、えるはもう笑えなくなっちゃうかもしれないじゃん!
笑って、吸血鬼だもん、仕方ないよね。って
流せる問題じゃないでしょ!」
岩「もうやめとけ。」
いつの間にか握りすぎて、血が流れた拳を後ろから掴まれる。
岩「わかってっから。
でも、ちゃんと押さえとけ。」
及「少しも良くないよ!
だって、だって、」
ゴスッ!と鈍い音がする。
岩「少しは冷静になれ。
えるが目覚めて、お前がそんなことをしたって知っても、
余計に傷つけるだけじゃないか。
片付くものも片付かないだろ。」
えるの顔がよぎる。
及「ごめん、わかってなかった。」
3人の顔を見回すと、
及「うん、そうだね。冷静になるよ。
俺部屋に戻ってくる。」
笑って手を振った。
花「ほんと、大丈夫かあいつ。」
松「少し心配だけど、止めてくれる奴もいるし、
とりあえず様子見ながら待っとくべ。」
岩泉は2人が話しているのも耳に入らず、
難しい表情で及川の背をおった。