第8章 狂気
No Side
矢「本当に入んのか、本当に。」
京「しらねぇよ。あの人がやっとけって言ったんだろ。」
矢「岩泉さんの事、あの人ってなんだよ!」
京「じゃあ、お前ら帰ればいいだろ。」
矢「そういう話じゃないだろ」
渡「とりあえず、早く行こう。
えるが部屋戻ってあのままじゃ辛いだろう。」
この3人が集まっているのは、
岩泉に言われて、えるの部屋の片付けを
するために集まっているのだ。
階段を登りきり、廊下を進む。
岩泉から借りた鍵を使わずとも、
簡単に部屋は開いた。
矢(まだ、甘ったるい…。)
目の前の惨状を物語るよりも先に
部屋に広がる香りが先についた。
岩泉と共にこの部屋に入った時に感じた
あの匂いはまだこの部屋に残っていた。
渡「えるの血か。」
冷静にそういうと、部屋の中へ進んでいった。
渡「まず、窓開けないと残るな、これ。」
3人の感じた匂いは、えるにはわからないかもしれない。
それでも、どうにか消したりたかった。
まだ乾ききっていない血は、少し触れると
簡単に色を移す。
酸化しつつある血の香りも、色も
確かな証拠で。
不愉快で仕方なかった。
矢「える、いなくなると思うか。」
京「そうに決まってるだろ」
意外にもそれに反応したのは京谷であった。
京「もし、まだ残りたいと思ったとしても
どうやっても隠しきれないだろ。
あいつらが、移籍しろってうるせぇだろ。」
京谷のいうあいつらとは、学校のことだろう。
渡「京谷のいう通りかもな。
この件は必ず学校に伝わるだろうし
このままっていうのも難しいかもな。」
矢「やっぱりそうなのか。」
そこから誰も喋れないまま、黙々と片付けをした。
血の付いたベットを処分し終えて、
寮に戻る途中、矢巾は口を開く。
矢「やっぱ、このままいてほしいよな。
マネージャーも続けて欲しい。
俺の我儘かもしれないけど。」
誰も頷くことはできなかった。
でも、それは皆の確かな願いであった。