第2章 ハジメテ
える
仁花ちゃんと別れた後、
生徒手帳を見ながら寮の道を探す。
地図を見ながらなのに、全くもって近づいた気がしない。
える「ここ、どこ…?」
カラスが鳴いて、夕日は落ちて
不気味としか言いようがない…
える「きっともう少し、もう少しっ…」
意味のない自己暗示をしながら歩いていた。
「一年生だな。声かけるか…?」
「確か、教室にいたよーな…」
「あんなキレーな銀色。見たことねーよ。」
「えっ!?褒めたのっ?今⁈」
「俺だって褒める!日向ボゲェ!!」
大きな声で話しているから、気がついた。
人がいてくれて、良かった。
える「えっと、寮ってどっちですか…?」
「えっ?!あっ!はいっ!!」
ボンッと音がした気がした。
すると隣の黒髪さんは
「俺らさっき寮出てきたよな」
と、オレンジ君に聞いている。
名前、知ってるけど、話したこともないからな…。
「えっあぁ。うん。」
黒髪くんに言われて答えるオレンジ君。
それよりもさっき寮から出てきたと聞いて驚いた。
それだと、今迄きていた道はなんだったのだろう…。
まぁいいや、戻ればあるんだろうし。
「ありがとう。それじゃあ、また明日。」
小さく頭を下げた。
「おい。行けんのか、寮まで。」
える「多分、大丈夫だよ?」
「こんなトコまで来てたやつが?」
グサッと刺さる。
「おい、影山。言い過ぎだぞ」
と隣のオレンジ君はいった。
「名前。」
える「え?」
「なんていうんだって聞いてんだ。」
名前 とだけ言われて解る訳がない。
と心の中で悪態をつきながらも。
える「える。 えるよ。」
「俺は影山。える。お前を送っててやる。」
「俺日向翔陽!よろしくね!」
上から目線の影山君とは違い、日向君は、
とても明るく、名前の通りだと思う。
える「じゃあ、影山君。日向君。よろしくね。」
人の好意を蔑ろにしてはいけないと思い、
ありがたく受け取った。