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吸血鬼なんて聞いてないっ!

第6章 距離感



及川

及「おはよーえるちゃん!」

勢いよく扉を開けた。

える「…及川さんですか?お早うございます」

髪が濡れてる。
朝風呂なのか?朝風呂なのっ?

綺麗な白髪が顔に少しだけ張り付いてる。

少しだけ乾いた毛先は無造作に遊んでいる。

及(何このかわいいのっ!)

及「お早う、える。」

ギュウッと抱きつく。

える「及川さん…?」

及「充電中です。しばらく離れないでください。」

クスクスと腕の中で笑うえる

える「変な及川さん。」

ただそう一言言って何も言わなかった。

及「嫌な顔しないの?える。
朝から抱きつくなんて変だって思わないの?
この前みたいに拒絶しないの?」

顔は見えないけど、外を見るように首が動いた。

える「…何か引っかかってるような気がしたからですかね。」

及「そんな風に見えたかなぁ。」


なんていうけど、本当は気にしてる。

岩ちゃんとえるの事。

昨日岩ちゃんが部屋から出てきたこと。

普段と違うくらい意識してる親友のこと。

女の子のことで悩んでる初めて見る親友のこと。


遮るようなことはしたくない。

でも、でも、

血のせいなのか、運命のせいか、彼女のせいか。

俺はやだ。

そんなの考えたくないけどさ。

岩ちゃんに迷惑かけたくない。
それに初めてだと思うんだ。
岩ちゃんのこういうこと。

邪魔したいわけじゃなくて、
ただ彼女を取られたくないだけ。


える「及川さん、充電できました?
学校、遅れますよ?」

及「学校行きたくないなー。」

える「だめですよ。そろそろ行かないと、みんなが心配しますよ?」

腕に力を少し入れた後、
ゆっくり離れる。

及「ありがと、える。また後でねー」

なるべく満面の笑みで。

聞きたいこと、いっぱいあったけど
少しだけ、もういっかな。
なんて思ったりもして。

えるは穏やかな笑顔で、手を振り返してくれた。





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