第6章 距離感
える
何処かふわふわした様な、
高揚した様な不思議な感覚。
ギュウッと服の裾を掴む。
誰もいない廊下を見つめる。
える「戻ろ。」
パタンとドアを閉めた。
お茶が入っていた彼のコップと
使っていた自分のコップを台所へ。
える「まだ、いいかな…。」
たった2個のコップを洗う事がなんだか面倒で、
置いたままその場を離れた。
今迄使っていた机に戻ると、
出してもいない本が置いてあった。
私の名前が入った、あの本が。
不審に思いつつも表紙を開く。
4ページ目。
少しグラデーションがかった蒼。
まだ薄くてあまり認識できないような蒼。
触れると消えそうなほどの。
13ページ目。
先のページより濃い蒼。
絵の具の水滴を落としたような柄。
この違いはなんだろう。
不思議に思いながらも本を閉じて、棚に戻した。