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吸血鬼なんて聞いてないっ!

第6章 距離感


岩泉

える「ありがとうございました。」

えるは、教科書をしまう手を止めて振り返った。


える「おかげで、課題もなんとかなりました。」

岩「おう。よかったな。でも、上の空だったのは許しがたいがな。」

なんて冗談を言うと、すいませんでしたって笑う。

岩「他の奴らに教えてもら」


そこで言葉が切れた。


いいのか?他の奴と一緒に勉強させて。
いつでも手、出しそうな奴だっているわけで
自分のことを棚にあげる様なことは言えない。
だけど、他の誰かとだなんて考えられない。
2人きりだなんて…。

ふと我に返ると、えるは不思議そうにこちらを見ていた。

岩「また、俺が見てやるよ。
この塔にいてもいなくても。面倒見てやるよ。」

そうだ。
この塔に来る前に俺はこいつに言った。

守ってやる、安心しろ、と。

える「是非、宜しくお願いします。」

なんて笑ったえるを守るのは、俺がいい。

ずっと側に居ればずっと守ってやれるのに。


邪な考えがよぎるなか、
自分の冒した罪を思い出す。

それを消す様に時計を見る。

短針は10時を指そうとしていた。

岩「遅くなってきたから、部屋に戻る。
戸締りしっかりして寝ろよ。」

わかりました。と言って、ドアまで来てくれた。

岩「おやすみ、える。」

える「おやすみなさい、岩泉さん。」

柔らかい髪を撫でて、
手で掬うと、それにキスを落とした。

岩「じゃあな。」

えるが言葉を発する隙を与えずに、
部屋を出た。


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