第6章 距離感
える
「ゔー…。あー…。」
呻くきながら、ベットに顔を埋める。
(勉強しなきゃな。そろそろ帰ってくるだろうな。)
またベットの上で呻きながら、少し脚をばたつかせた。
各塔にある体育館で部活をしている皆が
そろそろ帰ってくるのだ。
(気まずくなりたいわけじゃないけど…。
どんな顔していいかわかんないし、
私逃げちゃったし…。)
そんな風に悩んでいる事もつゆ知らず、
みんな帰ってきた。
したから「ただいまー」「疲れだー」
など、練習終わりのみんなが話しているのが聞こえる。
その中に、ドタドタと階段を登る音がする。
その音は、私の部屋で止まった。
誰かわからない。
岩泉さんだと思うけど、及川さんの様な気がする。
もしかしたら、金田一くんかも知れない。
ドアをノックされる。
ガバッと布団を被る。
その音に気付いた誰かはドアを開けた。
「たっだいまー!って、あれ?何してるの?」
及川さんだ。
このテンションは及川さんだ。
布団のふくらみについてだろう。
「ねーねーえるー。出てこよーよ。
及川さん、お帰りなさいって言って欲しいなー。」
ベットに沈む体重。
「えるー。」
背中を突かれて、ピクッと肩を震わせる。
及川さんがクスリと笑みをこぼした様な気がして、
ギュッと拳を握りしめた。
また、ツーと背中をなぞられる。
「っ!」
ガバッと身体を起こした。
「及川さんっ!」
「おはよ、える。」
満面の笑み。
及川さんのそれほど怖いものはない気がして…。
「何するんですかっ!」
「ゾクゾクしちゃったんだもん。しょうがないでしょ?」
疑問形で言われても…。
「ま、いっか。えるちゃん、ただいま。」
なんか、片付けられちゃった。
…これは、お帰りを言わなきゃいけない?
なんか、及川さんに耳が見える。
尻尾が見える。
なんか、かわいいかも…。
「お帰りなさい、及川さん。」
「ただいま。」
嬉しそうな笑顔につられて、私も笑顔になる。
「ねぇ、なんで撫でられてるの?」
「なんか、かわいいなって…。」
どちらもともなく笑いあった。