第6章 距離感
える
狭い教卓の下に二人。
抱きしめられる形になっている。
「どういうことでっ!」
口を開いた途端に扉が開く音がして、
頭をぐっと彼の胸に寄せられた。
静かすぎて、お互いの鼓動が聞こえるくらい
緊張していた。
「ここに、誰か入っていった気が済んだよなー」
「二人、だったんだろ?力にその手の話、なかっただろ?」
「そうかー。じゃあ、もどるか」
「そうだな、龍。早くしねぇと、昼休みが終わっちまう」
ガラガラとドアの閉まる音がする。
足音が遠くなるまで、シンとした教室に
二人の息遣いだけが聞こえた。
抱きしめる力が弱くなったから、教卓の下から出る。
「悪かったな、巻き込んで」
える「えっと…。」
縁「2年の縁下 力だ。ほんと、ごめんな」
える「1年の、 えるです」
ペコリと頭をさげる。
縁「こんなこと言うのも何だけどさ、えるは、どうしてここら辺歩いてたの?2年生に、知り合いでも?」
ここら辺、2学年の近くだったんだ。
える「まぁ、縁下さんと同じ様なもので…」
縁「そうだったんだ。でも、そろそろ予鈴なるね」
時計をチラリと確認する。
どうしよう、戻れるかな…。
える「本当ですね。じゃあ、これで」
教室を出ようとした時、
縁「あいつらも、一年教室まで探さないだろうから、ついてっていい?」
える「…むしろお願いします!道、わからなくなりそうなので!」
縁下さんの提案に、感謝して教室を後にした。