第6章 距離感
える
ガチャリとまた、戸が開く。
岩泉さんだった。
及「おはよー岩ちゃん。」
岩「おう」
私の席の横に座った。
まぁ、来た順に席に着くから当たり前なんだけど…。
岩「はよ。」
える「おはようございます。」
声、かけられたのに目をそらしてしまった。
隣で頭が痛いと嘆く岩泉さんも、
昨日の事は覚えてないということだろうか。
岩「お前は、大丈夫なのか?」
える「へ…?」
私の頭をコツンと押された。
える「あ、ああ!大丈夫です!」
変に声が裏返る。
これ以上ないくらい急いでご飯を食べて
すぐに席を立つ。
これ以上隣にいれば、昨日のが思い出される。
向こうは覚えていなくたって、こちらはよくない。
える「ご馳走様でしたっ!」
急いで食器を台所に置いて、
置いたままにしてしまった携帯を取り、
出入り口に向かう。
急いでいたけど、なるべく静かに戸を閉めた。
及「どーしたんだろ、える」
岩「そうだな。」
及「逃げるみたいに行っちゃったね。」
岩「そうだな。」
及「昨日、なんかあったりして。」
岩「…そうだな。」
その一瞬を及川は見逃さなかった。
苦虫を潰した様な表情を。
違うと答えて欲しくて。
及「岩ちゃん、手出したの??こわーい。
まだ、俺でも出してないのにっ!」
また、一瞬間が空いて、
岩泉が及川を睨み付けた
岩「うるせーな!黙って食べろっ!」
叩かれた。
及(バレバレだよ。適当な返事に、即答と、変な間。)
及「はいはい。でも、出しちゃったらしょうがないじゃん?美味しそうじゃん。」
あえてイブのことは触れずに、
そして彼がこれ以上思いつめない様に
言い訳を作った。
岩「うるせーよ。しつけーな」
バクバクと食べて、部屋に戻っていった。
及(俺らは、しょうがないよ。思いつめないで、岩ちゃん。)
先に手を出されたことよりも、
親友の心情の方が大きかった。