第4章 蒼 イ 塔と私
国見
国「ねぇ、俺が欲しいって言ったらくれる?」
える「えっ…」
動揺、してる。
まあ、誰だってそんなこと言われたら
戸惑うだろう。
でも、こんなの初めてなんだよ。
全身が、欲しいって。この血が欲しいって言ってる。
彼女の左肩をこちらに引くと、
少し向いていた体は、真っ直ぐ自分を見る形になる。
左手首をつかんで、口元に寄せる。
人差し指を軽く甘噛みする。
あ、真っ赤になってる。
国「える、大丈夫?」
真っ赤な顔は、こちらを向いていて、
目線だけが泳ぎながら、こちらを見ていた。
国「ねぇ、いい?」
こんな相手に質問だなんて、卑怯かなとは思うけど、
こんな機会めったにないだろうから、やめてあげない。
伏せた目をただ見つめていたけど
国(ダメだ、我慢もできなかったっけ。)
この甘いに香りによっているような感覚になる。
はっきり、血を求めているようで
理性は感情を抑えきれないようだ。
える「あっ…」
牙が皮膚を突き刺す感覚。
彼女も、俺も、感じた。
控えめに、でも恍惚とした声が聞こえた。
国「もっといいの?」
フルフルと首を振っていた。
目元には、痛みのせいか瞳が潤んでいる。
苛虐心を煽られるも、こんなに人がいる場所では
止められるだろうし、最悪誰かが便乗しかねない。
口元から指を離し、傷口にキスを落とす。
血が止まり、離れる頃には治っているはずだ。
残りの血は舐めとってしまえば
何の証拠も残らないから、俺は何も言われない。
驚いたような表情をする彼女に、
国「キズ、残さないから安心して?」
などと、きっと驚いているであろう事に答える
える「国見さん…。」
国「ん、なに?」
口を開きかけて止めた。
何か躊躇している。
彼女から目線を外して、他のメンバーを見る。
国「俺、行くね。」
その口から出る言葉が怖くて、逃げ出したんだ。
拒絶の言葉なんか聞きたくないけど、
感情のままに動いた末だから、不安だった。
まだ、嫌われるわけにはいかないんだ。
血だけじゃないことを確信したら
初めてスタート。
国「かわいい。とか、らしくない。」