第4章 蒼 イ 塔と私
える
自己紹介も終えると、皆それぞれに騒ぎ出した。
椅子に座っていても、立っていても、
みんな楽しそうにしていた。
私の隣にいた及川さんと岩泉さんは、
別の場所でみんなと遊んでいた。
不意に後ろから、声をかけられる。
「隣、いい?」
える「うん。えっと…」
オレンジジュースの入ったグラスをテーブルに置くと、
私の右側に座った。
国「国見だよ。国見英。まだ名前覚えきれてないでしょ?」
える「うん、ごめん。ありがとう。」
申し訳なかったが、教えてくれたことに
感謝した。
よかった。困っていたこと、気づいてくれて。
える「国見くんはいいの?行かなくて。」
騒いでる他の一年生たちの方を見る。
国「いいんだよ俺は。遊んでるより、少し知れたらなって思って。」
何を?と、きこうとしたけれど、鎖骨に伸びてきた手に驚いた。
冷たく柔らかい感覚が、わたしの肩を震わせた。
国「これ、誰の?」
噛み跡。
える「影山くん…。」
それを聞いて怪訝そうな顔をしたけど、
何か企むような笑顔を向けた。
国「影山が欲しいって言ったの?」
える「あれは、しょうがないっていうか、いきなりっていうか…。」
国「じゃあ、えるからはあげてないんだ。」
頷いたのを確認すると、また口を開いた。
国「ねぇ、俺が欲しいって言ったらくれる?」