第10章 変化
える
花「真っ赤なすべり台と砂場とブランコだけの寂しい公園。
覚えてっかなぁー…」
える「その公園なら覚えてます!
隣にバスケットのコートがあって、高校生か中学生がよくバスケしてたはず!」
松「そういう所は覚えてんだな。
あれ、多分俺らも居たよな」
花「多分な。
いっつも一人でブランコ漕いでたのがえるだった」
小さい頃は自分からじゃ何も話せなくて
遊ぼう、なんて声掛けてもらうまでは何にも言えなかった。
けど羨ましくて毎日公園に通って。
それがいつからか鬼ごっこをして遊んだりするようになったんだっけ…。
松「同じ髪色の前髪上げた女みたいな奴がいた筈だけど
多分覚えてないよな。それ、花だから」
花「松だって髪長くして天パでクルクルだったろ!」
える「当時、女装の趣味でもあったんですか…?」
それは本当に信じられない。
戸惑った様に私が二人を見ると盛大に花巻さんが吹き出す。
花「あー、つら。
える。ちょっと目、瞑っててな」
言われた通り目を瞑って数十秒。
少しだけ高めの声で名前を呼ばれる。
目の前に座っていたのは小学生2人。
悪戯っぽい笑みを浮かべるのは
花巻さんに似ている。
ヒニルな笑みを浮かべるのは松川さんみたいだ。
花「俺らはこの姿でえると遊んでたんだよ」
える「ちっちゃい…。
花巻さんも松川さんも可愛いー!」
思わず抱きしめたくなるサイズ感。
小学校低学年位だろうか。
松「俺らは外見変えないと、馴染めないからな。
こうやって姿変えて生活してんの」
幼い声に、冷静な言葉遣いは、松川さん。
へー、と感心し頷くことしか出来ない私に笑いかけて
花「思い出せなくてもいいんだ。
なにかのきっかけになればいいな、くらいの気持ちだから。
気にすんなよ」
少しだけ罪悪感を感じていた心にストン、と
落ちてきたその言葉にとても安心することが出来た。