第10章 変化
える
える(大丈夫、大丈夫、大丈夫)
自分に言い聞かせるように、
国見くんを安心させるために
再三唱える
国「える、ここにいれなくなるんだよ?
だって、その、岩泉さんのこと、好きなんじゃないの?」
子供のようにたどたどしい口調で
ゆっくりと訊ねる
あれ?そうだっけ?
国「付き合ってたんじゃないの?
2年の先輩達にそういう噂聞いたし」
私が眠ってる間ずっと看病してくれてたしな…
でもそんなんじゃない
あの後ああいう事はあったけど、
きっとそういうのが必要だったんだろう、きっと
改めて顔を横に振る
える(大丈夫だよ、私達そういうのじゃないから
岩泉さんはなんか、こう…
そういう立場っていうか、役割っていうか…
今回倒れたのが、女の私だっただけで、
男の国見くんが倒れたって同じように心配するよ)
うまいこと、伝えられなくて、ごめん、
と続けた
国「えるの言わんとしてること、わかるよ。
そうだよね、うん。俺のことも看病してくれてたみたいだし」
でも、と彼は続ける
「どちらにせよえるはここに戻るべきだよ
みんなもそうして欲しいと思うし、えるも残りたいんじゃないの?
寮をやめても、バレーは続けられるし
俺が出てくべきだよ」
緩く顔を振る
(どうせいつかは出てかなきゃいけなかったんだよ
それがちょっと早くなっただけで、そんなに支障はないよ)
ちょっと冷たい言い方だけど…
でもまぁそれはほんとだ