第10章 変化
える
部屋について机の近くまで寄せてもらう
える『ありがとう。8時ぐらいまで部屋にいなきゃなんだよね』
国「うん、ちゃんとここにいて」
部屋を出て行く時に、ドアを開けてから、こっちを振り向く
国「俺が、ちゃんと責任取るから。
えるの居場所は此処だよ」
笑顔なのに何処か寂しい
いろんな感情が混ざった複雑な表情だ
える『そこには、国見くんもいるよね?』
なんでこんなこと聞いたんだろう
これじゃまるで…
彼は曖昧な笑顔しか向けなかった
それが決定的なものに見えた
える『私はそんなこと望んでない。
私が来たせいでここの輪を狂わせてしまったから、
私がいなくなれば解決だよ』
及川さんだって、岩泉さんだって、
国見くんだって、
みんな私のせいで怒ったり、謝ったりしてた
自分にそんな影響力があるとか自惚れてるんじゃない
けど、女子である私が来たことで少なからず気遣ってくれていた部分はあると思う
迷惑がかかっているんだ
だったらいっそいなくなってしまえばいいんじゃないか
国「えるはさ、えるなりの持論があるみたいだけどさ、
ここの人達は誰1人えるが来たことで迷惑だなんて思ってないし、いなくなって欲しくない」
ハッと顔をあげた
国「ごめん、読んだ」
目が、緋色…
ゾクリとした
何かがこみ上げてくる
国「える!ごめん、嫌なもの見せた」
近寄って来ることを一瞬悩んで、
抱き寄せて目を隠す
視界が暗くなる
熱を帯びた手をゆっくりと離す
震えた手で彼の手を握る
そのままでいいよ、と思いながら頷く
える(その色は怖い。でも、国見君が怖いんじゃない。だって、ほらこんなにも近くにいるのに
私、安心してる)
気付けば手の震えも消えて、早鐘を撞くような心音も
今はゆっくりと刻んでいた