第3章 知ル
える
綺麗な茶色の目に
ふわふわとした髪の毛。
大きな背に、小さな顔。
そんな人と、顔が近いとか…
無理ッッッ!!!
さっきまで合っていた目を逸らして
下を向いた。
きっと顔は、滑稽なくらい真っ赤だろう。
「あれれ?かっこいい及川さんに、照れちゃった?」
なんで冗談のように言っているけど、
私は今大変なの。
取り巻く状況が変わり続けて
脳も、心も追いつかない。
聞いてる?と聞きながらほおを突くのもやめてほしい。
されるがままの十数分。
「あれ?及川、どうしたんだ、こんなところに。そこの子は?」
優しい声音。
顔をそちらに向ける。
私と似た、白髪。
この人も、髪質が柔らかそう。
って、こんなことは今はどうでもいいことで…。
「血…。」
首元のそれを見て、慌てて目をそらす。
「それ、お前がやったの?」
「いーや。多分…飛雄。」
チラッと、目で確認する彼の目を避けた。
噛み跡だけで、わかるものなのか。
「イブ。やっと見つけた…。」
「ダメだよ?及川さんが先に見つけたんだから。」
及川さん、と自身で言っているのなら
及川さんなんだろう。
及川さんは、私の上に跨る。
ソファの背もたれがあるせいで、逃げられなんかしない。
ネクタイがシュルリと解かれて、
ブラウスのボタンが外されていく。
抵抗する手もなくて、
それは恐怖心からなのか、
不思議な高揚感からなのか。
(やっぱ、ダメだよっ……!)
鎖骨をなぞられて、肩が揺れる。
その僅かな反応にも嬉しそうに
微笑みを湛えていた。
「それじゃ、いただきます。」
ギュッと目を瞑った時、
重さから解放された。
「嫌われちゃったね、イブに。」
また優しそうな声音。
及川さんは、少し離れたところにいた。
何が起こったのかはわからないが、
とりあえず助かった。
「俺、菅原孝支。三年生。」
そして遠くから、
「このイケメンは及川徹。及川さんでも、徹でも、好きなように呼んでね?」
さっきのことは、なんでもなかったように、
気さくに話してくれる。
三年生の先輩だから、
呼び捨てにはできないから…。
える「菅原さん、及川さん。」
名前だけ読んで、2人の顔を見つめた。