第3章 知ル
える
える「どういう、こと…!」
手のひらについた朱は、
間違いなく自分のもので。
あの冷たく鋭い感覚は、
幻ではなくて。
状況の整理がつかないまま、管理棟に飛び込んだ。
中に入っても、だれもいなくて
奥を見ればソファがあって、
そこまで歩き、腰を下ろす。
(私、死んじゃうの…?)
噛まれたであろう位置に、触れる。
触れたことによる痛みがあるが、
まだ、血が流れているようではない。
人間の体とは、こんなに早く傷を修復するものだろうか。
人を探そうとして、立ち上がる。
はずだった。
後ろから、腕を回されていて
体重をかけられていたため、立ち上がれなかった。
「そんなに、美味しそうな香りをさせて。
たべられたいの?」
後ろを振り返ろうにも、出来ない。
「誰かに、先に食べられちゃったから、
こんなに美味しい匂いをさせてるのかな?
君をこんなにしたのは誰?」
後ろにいる誰かの、息が耳にかかる。
ふわりとした甘い匂いが、
鼻腔を刺激する。
「黒の塔の子かな?赤の塔?それとも、俺たちの蒼の塔?」
なんのことだろう?
塔?
赤やら黒やら、色の名前。
やっぱり、わからない。
彼は急かすように、
彼の手が
私の髪を梳く。
そして、彼と目があう。
「ねぇ、教えて。」
「イブ」