第1章 始まりはあの日から
アクマの改造の話をボクたちにしなければこんなことにはならなかったのに……。
そう思わずにはいられなくて。
苦しくて悲しくて。
とてつもなく憎かった。
『アクマが憎いの?』
『何を泣くか、小さき主よ』
見えない目を抱えて泣くボクの中から知らない声が聞こえる。
女のように幼く高い声と男の低く優しい声。
彼らは言う、自分たちはボクに宿っているイノセンスなのだと。
だから、泣く必要はないのだと。
決してボクを一人にしないからと。
ボクはゆっくりと左目を開く、目の前には泣きながら謝っているアクマになった姉さま。
そしてその後ろには、微笑んでいる身長の高いきれいな顔をした男と嬉しそうに手を振っている男よりは少し身長の低いどちらかといえばかわいらしい顔をした青年がいた。
ボクは涙を流しつつ姉さまと一緒に家に帰る。
イノセンスたちはそばに来て心配そうにこちらを見ながら、静かに歩いていく。