第1章 始まりはあの日から
「本当に姉さんが帰ってくるの?」
え?
椿姉さんの言葉にボクは呆然とする。
なぜ?
クロスに伯爵は危険だと言われていたはずなのに、どうして……?
姉さまはボクを見て微笑む。
「クロスが前に言ってたでしょ、アクマを改造したって。それにかけてみたいと思うの」
耳元で伯爵に聞こえないように話す姉さま。
これでもう姉さんを思って泣かなくてもよくなるよと言い笑う姉さまは、とてもきれいで悲しかった。
「それなら、ボクが皮になる」
ボクの言葉に姉さまは首を横に振って、伯爵に向き直る。
「さぁ、楓の名を呼ぶのでス♡」
あぁ……やめてよ。
姉さまどうして。
ボクを置いていかないで……。
言いたいのに言葉は出なくて、ボクは楓姉さまが困った子ねと笑って、椿姉さまを殺すところを……椿姉さまが、ごめんねと笑って楓姉さまに殺されるところを見ていることしかできなかった。