第3章 ヘブラスカとイノセンス
イノセンスとはきっとこの体に埋まっている、あの二人の大本をさすものだとは思うのだが、しかし、それはできかねる願いだった。
そのイノセンスとやらは母さんが父さんにさえも見せるのを嫌がった代物で、父さんはおろか姉さまたちでさえ見せたことがないものだったからだ。
「イノセンスであろうモノを確かに持ってはいるが、見せることはできない。母さんに人に見せてはいけないと言われているのでな」
そういうと、そのモノは困ったように沈黙する。
「どうしてもだめか? 私にだけ見せることはできぬか? ほかの誰にもそのイノセンスの場所を話さないと誓おう」
どうやらこのモノはどうしてもイノセンスというものを見なければならないらしい。
母さんとの約束を破るのはとても心苦しいのだが、あちらも譲歩として自分だかしか見ないと言っているのだし、このきれいな優しい人になら見せてもいいかなという気になってきた。