第1章 始まりはあの日から
キラキラと日差しが降り注ぐあの日、上の楓姉さまとイノセンスとやらを探しに来たクロス・マリアンという男は出会った。
それまで浮いた話一つなかった、楓姉さまが初めて恋というものに落ちた。
楓姉さまはクロスを引っ張って家に連れてきた。
あんなに強引な姉さまをオレは初めて見たな……うん。
姉さまに連れてこられたクロスは、ボクが住んでいた離れに身を置いた。
といっても、クロスがそう望んだわけではなく姉さまが勝手にクロスを我が家に滞在させてしまったのだ。
最初は反対していたはずの下の椿姉さまも、クロスの大人の色香とやらにいつの間にかやられていたにはため息しか出なくて参った。
そうしてクロスは、この家に約三年という長い間滞在した。
クロスは最初、探し物が見つからないのでとりあえずほかの国に行こうとしていたのだが、姉さまたちの粘りにこの三年間負けていた。
だが、三年目、さすがにこの国を出ることにしたようだ。
姉さまたちは寂しそうに見送っていた。
クロスはそんな二人に苦笑しつつ、ボクの頭を撫でていった。