第1章 出会い
「実は探し物をしていて…。ドラゴンボールという願いを叶えてくれるオレンジの玉があるんです。その場所を示すドラゴンレーダーを辿ってこの森まで来たんですがどうやら故障してしまったみたいで。探すのに夢中になり過ぎて森を深く進んで迷ってしまった所でこの家の明かりを見つけてここまで来たんです。」
彼はここまで来た経緯を説明してくれた。
ドラゴンボールというものはこの森を知り尽くしている動物達にさえ今まで聞いた事もなかった。
私はハーブティーを一口飲み、
「そう…なんですね、それでそのドラゴンボールって言うのは見つかりましたか?」
と尋ねる。
「いえ、見つかりませんでした。そう簡単にはいかないみたいですね…。」
彼は残念そうに下を向いた。
「そうですか…。」
言葉が見つからず沈黙してしまう。
彼もその沈黙の気まずさを感じたのだろうか、彼は話題を変えた。
「そういえば、君はどうしてこの森に住んでいるんですか?」
「えっ!えっと…私は…その…。」
言えない。
人を避ける為に森に住んでいるなんて…。
それに私が魔法使いである事、それがバレてしまうと故郷を逃げ出してきた事ももしかしたらバレてしまうかもしれない。
私は咄嗟に、
「えっと…そう…薬!私は将来町で薬屋さんをしたくて!その…森には沢山の種類の薬草があるから…ここで勉強してるんです!」
そう答えた。
半分は嘘ではない。
魔法使いとして様々なポーションを作る事は必要不可欠だ。
ただ町で売れるようなポーションではなく危険な代物もあるのだが…。
「そうだったんですね。立派な薬屋さんを持てるといいですね。でも1人で森に住むなんて危険な事もあるんじゃないのかな。」
…彼はどうやらフウの存在に気付いていないらしい。
フウは彼が家に来た時から起点を効かせて置物のフリをして微動だにしていない。
「い…いえ、全然平気です!危険な動物もいないですし。」
「それならいいんですけど、あまり夜は外に出ないようにして下さいね…って俺が言えた事じゃないんですが。」