第1章 崩れる、音がする
僕は、何をどうしていいのかわからずに、廊下をウロウロしてた。
遠くでは、泣きじゃくる短刀たちの声が聞こえる。
「姫、ちょっとこっち来い」
鶴丸が僕の手を引張り、遠くの方へと移動させる。
それでも、僕は主が気になって後ろを振り向こうとした。
「もう死んじまったんだ。どうにもならないぜ」
「でもさ、鶴丸」
「落ち着けって」
僕は、桜が見える縁側に案内され、お茶をもらった。
そのお茶は、茶柱が立ってる。
いいことがあるって証拠なのに、主が死んだ。
いいことなんて、全然無いに決まってる……。
「少しは落ち着け」
「でも、でも……」
「お前がしっかりしなくて、どうするんだ!」
でも、どうしていいかわからないんだ。
主が死んだ。
つい最近、野菜を食べなくなって、みっちゃんが毎日頑張って野菜ジュースやら野菜のお菓子を作っていた。
それでも、主は一口も食べなかった。
むしろ、孫の優大様はよく食べていた。
頬を膨らませながら食べる優大様を見て、主はニコニコと嬉しそうに笑ってたっけ……。
「おいおい、泣くなよ……」
あぁ、確かあの時「ハムスターみたいでめんこいぞ」と主は言った。
頭を撫でられてる優大様は嬉しそうだった。
あぁ、僕はどんな顔をして優大様に会えばいいんだろ?
あんなに、お爺ちゃんっ子だったのに。
「姫……、落ち着いてくれよ……」
主と最後に話したことは何だっけ?
確か、「寝てれば治る。薬飲んだら治るから、少しゆっくりさせてくれ」だった。
あの時、どうしようもなく辛かったんだ。
それなのに、僕は……、僕は……、主の危機を察して病院へお連れしなかったんだ。
僕が、僕が主を殺したんだ。