第2章 目覚まし係*ロー*
それでもやはり初めの頃は怖かった。
だが、今となってはもうなんとも思わない。
あんなことさえしなければ。
中々目を覚ましてくれない船長を大きく揺する。
それでも起きないので耳元で叫んでやろうと思い顔を近づけた瞬間
グイッ
「わわっ!?」
何者かに頭を押され、船長との距離が鼻が当たるくらいに近づいた。
誰の仕業かは分かりきっている。
「船長ー、近いです。起きてたんなら言ってくださいよ。」
そう言うと船長は目をあけ、ニヤッと笑みを浮かべた。
最近起こしにくるといつもこんな感じだ。
初めは腰などを触りからかう程度だったが、だんだんと重度になってきている気がする。
少しの間そのまま見つめあっていると船長がふぅ、とため息をつく。
「まったく。最近はリアクションが薄くてつまんねーな。」
なんて呟きながら私をどけて起き上がり風呂場へすたすたと入っていった。
船長がいなくなったとたん私はへなへなとその場に座りこみ、顔を手で覆った。全身が熱かった。
それもそのはず。あんなことされれば誰だって真っ赤になってしまう。
それが好きな人だったらなおさらだ。
だけど、船長の前ではけしてそのようなそぶりを見せない。
彼はきっと私をからかっているだけなんだ。
それに、彼のまわりには美人な女性がわんさか寄ってくる。なんの取り柄もない私が相手にされる訳がない。
だから、この気持ちはしまっておこうと思った。
そんなことを知らない船長はすぐからかってくる。
だから気持ちを抑えるのが大変になってきた。
はぁ、と一人で盛大なため息をついていると風呂場からガッターンと大きな音が響いてきた。