第2章 短編集2
カンタベリーの鐘
ハウルさんは最近変わった。そう、葉子と出会ってからだ。
葉子は街の花屋のお手伝いをやっている。
そこの花屋にハウルさんが別の女性にプレゼントするための花束を買いに行ったとき二人は出会った。
ハウルさんの一目惚れだった。
それからのハウルさんに僕はただ驚くばかりだった。
普段は絶対というほどしない掃除をしたかと思えば
葉子のいる花屋まで歩いて花を買いに行き
花瓶に花を生けた。空から行かないのは葉子が
「急に空から現われると驚いて心臓が止まるわ」
と言ったからだ。
ハウルさんは本当に変わった。
「恋愛なんでゲームと同じさ。惚れた方が負けだよ」
そう言ったハウルさんはもういなかった。ハウルさんを変えたのは葉子だ。
葉子には恋人がいた。決していい人ではなかったみたいだ。
葉子はその恋人に暴力を受けていた。
それを葉子は秘密にしていて誰にも、ハウルさんにも言わなかった。
ある日、葉子の腕に痣があると気付いたハウルさんの行動は早かった。その恋人を殴りに行ったのだ。
「貴方が殴ってくれてすっきりしたわ」
言いながら葉子は泣いた。とても静かに。僕はその姿を綺麗だと思った。
葉子がハウルさんを変えた様にハウルさんも葉子を変えた。
その事件があった次の日、葉子は城にやってきた。
とても綺麗に咲く真っ赤な霞草を持って。
そして彼女は霞草を花瓶に生けると笑顔でこう言った
「赤い霞草の花言葉、知ってる?“感謝”って意味なんだ。
だから、ハウルにと思って。私を変えてくれてありがとう」
ハウルさんは葉子のおでこにキスをした。
僕はというとなんだか恥ずかしくなって自分の部屋に戻った。
それからどうなったかって?
それを聞くのは野暮ってやつさ!