第1章 短編集1
「ただいま」
大分日が暮れかかった頃、あたしは城へ帰った。
外は今にも雪が降りそうな雨だ。
「葉子おかえり、寒かった?」
「うん、外雪降りそうだし・・・」
「なにか暖かいものでも出そうか?」
「うん、ミルクがいいな」
「わかった」
コートを脱ぎ、緑色のソファに腰掛ける。
それからタオルを取り出し、少しだけ濡れてしまった髪をふいた。
カルシファーの火が冷え切った体に暖かさを少しずつ取り戻させる。
「はい、ホットミルク」
「ありがとう」
砂糖を入れてから、冷まし、飲む。
あったくて、甘くて、おいしい。
「あったかい」
「ん、よかった」
ソファの隣に座ったハウルがちょっとだけ眠そうな顔をしている気がする。
「ハウル、眠いの?」
「ちょっとね、昨日新しいまじないを試していてあんまり寝れなかったから」
「じゃあもう寝る?」
「ん~・・・ここで寝てもいい?」
「え、ここで?」
「うん、膝枕するのとされるのと、どっちがいい?」
「え?!」
「僕はどっちでもいいよ。葉子は?」
「どっちがいいって・・・」
「じゃあ僕がされたいな。いい?」
「いいけど・・・」
「じゃあ失礼」
なんだか流されてしまった気がするけど・・・
ハウルの頭があたしの膝に転がった。
瞳を閉じたハウルはやっぱりとってもキレイで、
まつ毛がとても長いし、髪はさらさらだった。
じわじわと太ももにひと肌の体温が伝わってくる。
ハウルはしばらくするとすぐに小さな寝息をたてていた。
疲れていたんだろうな。
艶やかな髪の毛を撫でながら思った。
「ハウル、おつかれさま。おやすみ」
いい夢を。