第1章 悲しいっていうか、 :橘真琴 切甘
岩鳶を一望できるこの丘が小さいときから大好きだった。
いくつの時だっけ?
私が家出してここに居たとき息を切らしながら坂を駆け上がってきて私を見つけてくれたのは。
星を見ようって遙と3人で夜中に家抜け出して朝親に怒られたのは。
夏祭りの時人混みが嫌だって遙が言うから毎年ここで花火を見るようになったのは…
遙、真琴、渚、凛、私。
将来の夢をこの丘から叫んだのは……
『思い出が…いっぱいだね。ここ』
「なつみはここがお気に入りだからな。お!あったあった。ほらここ!」
真琴が差した指の先には
岩鳶SCに通ってたときに背比べをして付けた傷跡があった。
「こんな小さかったんだな、オレたち」
『うん。真琴、私より小さいね』
「小学生の時だぞ?当たり前だよ」
『そっか…そうだよね、成長しますよねぇ』
「うん。なつみも。大きくなったね」
私の大好きな手が頭を撫でる。
「それに………、綺麗になった。うん。もともと可愛かったけど、綺麗になったよ」
…………………―。
心臓が高鳴る。
ドクン、ドクンと…ゆっくりだけど大きく脈を打つ。
『…―、ぁ、、えっと…ありがと///ま、真琴も…その…か、かっこよく…なった…ね?』
「クスッ、疑問系なんだ」
『いや!違うっ!違くて、だから…昔より数倍…いや、数千倍かっこいいよ!!』
「……。クスッ、あははは!そっか、ありがと。はははは、数千倍って…クスクス、っはははは」
『そ、そんな笑わないでよ!真琴のばーか!』