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第1章 悲しいっていうか、 :橘真琴 切甘




そのあとも特別何って話した訳じゃないけど話は尽きることなくいつもみたいにふざけあって…笑いあって…


「よかった」

『え?』

「いつものなつみだ」

『ん?橘さん?よく意味が…』

「卒業式終わってからぼーっとしてたし…もしかしたら岩鳶でるの嫌なのかなとか思って心配した…。けど、今いつもの笑顔で笑ってる。だから少し安心したかな」

『真琴…寂しくないって言ったら嘘だよ。でも、楽しみじゃないはずないよね。だって東京だよ?都会だよ?知らない土地で知らない人と出会って…それで、たくさんの事に触れて、インスピレーション受けて…それで…また、岩鳶に帰ってくる』

「うん。待ってるよ。なつみはオレの大事な幼馴染みだから。家族みたいなものだし、何かあったら直ぐに連絡してくるんだぞ?」


大事な幼馴染み。
家族……………。

そう、だよね。
それ以上にはどう頑張ってもなれない。

『うん。…もう、帰ろっか』

「もういいの?」

『うん!真琴からの一生幼馴染み発言を聞けたので、何も心配することなく東京行けるよー!あ、彼氏できたら報告するからね~』


そう言うと私はベンチを立って歩き始めた。
いつものペースより少し大きな歩幅で。

頬を伝う滴は汗か何かだよね。


いつもの日常は明日から来ない。
いつもの朝日も、海岸沿いの登下校も、退屈な授業も、楽しい部活も。

横を見れば真琴や遙、皆がいる安心感も


いつもの日常は今日で終わり。


いつもの押し付けがましいほどの優しさも、大きな手も、少し困ったような笑顔も…。


全部、今日で………。


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