第8章 岩鳶 :橘真琴 切甘 続
「お邪魔します!!!!」
「あらまこちゃん!あの子もう連絡したの?なつみ部屋にいるわよ」
「連絡...は、もらってないけど姿見えて...あ!とりあえずお邪魔します!」
玄関からそんな話が聞こえてきたけど未だに窓際につったってる私は、もうすぐ真琴が来るってわかっていながらも身動き一つ取ることができなかった。
ドンドンドンドン、
「なつみ!!」
『真琴.....っ、』
「どおして!どおして連絡くれなかったの!?何回か電話やメールしても返してくれないし、いっこうに連絡こないし....オレ、ほんと心配で....なつみにもしもの事があったらって考えたらオレ...オレ....ほんと.....でも、よかった。なつみだ。本物の...なつみだ」
久しぶりに聴いた口調は少し怒っているせいか荒かったけど声色はとても切なく、今にもないてしまいそうな声だった。
『連絡しなくてごめん....その、私....』
その瞬間視界が暗くなり懐かしい真琴の匂いに包まれた。
「ごめん、って聞きたかったわけじゃないよ。オレこそ怒鳴ってごめん。でもやっぱり心配だったんだ。ごめんな。最初に言うべき言葉はおかえりだったよな....おかえり、おかえりなつみ。ずっと、ずっっと逢いたかったよ」
『ま...こ、と....・・・ー』
涙がこぼれた。
こんなにも真琴に心配をかけていたのか。
こんなにも真琴を苦しめてしまっていたのか。
ごめん、ごめんね。
『ただいま、真琴』
「うん。おかえり、なつみ」
そういうと真琴は手の力をさらに強くしギュッと抱きしめてくれた。
今までの沈んだ気持ちやモヤモヤしたものがスッと消えてとても穏やかな気持ちになった。