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第8章 岩鳶 :橘真琴 切甘 続



なんで?
私はデジカメで写真を撮ったけどそれは東京に持ってったし、第一現像していない。

なのに、なぜ。


-なつみへ-
卒業式の時オレのカメラで撮った分の写真を置いときます。
っていっても似たような写真ばっかりか。
送るのも考えたけど、お盆か正月にでも帰郷した時のためのサプライズにしようと思って置いとく事にしました。
この写真見たらオレに電話する事!
わかった?
じゃあ、電話楽しみにしてる。

-橘 真琴-


胸が締め付けられる感覚がした。
淡い緑の便箋に綺麗に書かれた文字は見慣れた真琴の字だった。

5年前、岩鳶を出てから私は1度も帰郷していない。

もちろん親には何度も顔を見せに来いと言われたが、忙しいとか帰るお金がないとか適当な理由をつけては帰る事を拒んだ。

理由は一つ。

真琴を忘れるため。

再会する時は、幼馴染としてあう。

そう決めたから。

結局大学も卒業してしまい特にやりたい事も見つからずフリーターを1年経験してから、岩鳶に帰る事を選んだ。

5年も経てば大丈夫だろう。

確信はなかったけど疑いもなかった。
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