第6章 引っ越してきまして :橘真琴 切甘
『た、橘くん。教科書ありがとうございました。これ…』
「ぁあ…うん。どういたしまして。忘れちゃったときは声かけてくれれば貸すから。あ、でも忘れ物はよくないからな?」
『は、はい。気をつけます』
「よろしい。じゃ、オレ教室戻るから。優、寝てばっかいないでちゃんと授業聞けよ?」
「はぁ?ちゃんと聞いてるし。寝たこと無いし」
「よく言うよ…まったく…」
ズキッ ズキッ
なんで?別に優ちゃんと橘くんが付き合ってたって私には関係なくて…
何でこんなに2人の関係が気になるの?
「なつみちゃん?」
『っへ?あ、すみません。』
「クスッ 敬語じなくていいよ。あ、あと真琴でいい。そう呼んで!じゃ、またねなつみちゃん」
そう言うと真琴くんは小さく手を振って教室を出ていった。
橘 真琴 ……。
名前だけ見て女の子だと思い込んでたけど、あんなかっこいい男の子だったなんて…。
でも、真琴くんは…優ちゃんの…
「ほーんと昔からお節介焼きなんだから。なつみちゃんも気を付けないと母親が増えるよ―」
昔から…か……。
優ちゃんの言葉に愛想笑いをすることしかできなかった………。