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ボツ小説集

第1章 Oxymoron(東京喰種/相手無)


「もう一つはオクシモロン・プロジェクト。私の友人が立ち上げた実験よ。人間の血と肉以外に、グールの食料となる物を探す研究をしているの。今の所、人間のDNAで構成されていれば、母乳も汗も食べれる事は解明されている。だから研究者も、いずれは人間のDNAを使ってグール用の食品が作る事が目標らしいわ。母乳は研究の一部で、それを飲むだけでグールはどのくらい空腹から解放されるのかを調べている最中よ。私もそのプロジェクトに参加している被験者の一人なの」

金木は耳を疑った。同時に胸が踊る感覚も湧き上がる。何故なら、金木が求めていた答えはまさしくコレだからだ。人間を殺さずに空腹を凌ぎながら生きて行ける方法。人間でもグールでもない、中途半端な彼でも生きられる世界。それを突然、目の前の女性から出されたのだから、彼は目を丸くして二つ目のパンフレットに食いついた。

「人間で言うとベジタリアンよね。食べる為に飼い殺しした動物を自由にして、他の資源から栄養を取る。この場合、母乳も母親の血液から作られているから、栄養面で言えばかなり人肉に近い。まあ、人間の口に合う味は私達にとっては不味いんだけど、飲もうと思えば飲める味だったでしょう? あ、あと人間が1日3食を10食に小分けして空腹を凌ぐのと同じで、グールが毎日何リットルか母乳を飲むと、1ヶ月分の空腹をやり過ごす事も出来る。多少の空腹に襲われたとしても、理性を失わない程度には自分を維持できると思うよ。いざとなれば、人前でコーヒーに母乳を混ぜて飲んでも良いしね。周りからは変に思われないし、ダイエット食品だとか栄養剤だとか言って誤魔化せる。もちろんお金はかかるけど、人を食べたくない貴方にとっては良い話じゃない?」

ずっと黙り込んでいる金木を見て、夢主は情報を与え続けた。あまりにも話す量が多く感じられたが、それでも喋るつどに眼帯をしていない目が輝くのを見ると、彼女の方も止まらなかった。最後には金木のパンフレットを持つ手が震えだし、彼の喜びを肌で感じる。そして彼から溢れ出した感情は、希望に縋るような叫びとして表れた。

「どうすれば、母乳が手に入りますか!?」

冷静に考えれば、今までで一番恥ずかしい台詞を口にした金木だったが、彼はどこまでも真剣だった。興奮した様子に夢主は待ってました、とばかりにパソコンの画面を金木に向ける。
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