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距離感がおかしい

第10章 求めるもの








「……嘘だ。」
「本当だよ!だからこうして走ってきたんだよ!!」

はぁ〜と大きく息を吐きながら白澤さんががっくりと私の肩にうなだれる。
確かによく見ればいつもよりも少し呼吸が早い。

…………本当に走ってきたんだ…



「………さゆちゃんまだ怒ってる?」

肩に顔を埋めたまま白澤さんが弱々しくつぶやく。

「……どうでしょうね…」

頭の中でまだ整理が出来てなくて、ついっぱねてしまう。



けど



えぇ!!正直嬉しいですよ!!!


彼に嘘をつける器用さなんてない。
だからきっと、さっきの言葉も本当だ。

私だけだった。

きっと酷く長い彼の生涯。
その中で私だけだと確かに言った。
嬉しくないわけない。



それなのに…



さっきまでの怒りを、ショックを、そう簡単に放り投げて『ホントにホント?すっごい嬉しい♡』なんて言えるほど単純になれない。



「……さゆちゃ「見ないで。」

顔を上げようとする白澤さんの頭を、不本意だが抱きしめる形で抑え込む。

「………さゆちゃんコレは誘ってるの…?」
「バカ神獣!!」
「ゆ、許してはもらえたの…?」
「知りません!!」
「えー…」


あーーーもうバカは私だ!
どうしたらいいんだこれ…





「…ふふっ」



ん…?


「………何笑ってんですか…」
「いや……うん…ふふっいたっ!」


くすくすと笑いの止まる様子のない白澤さんの背中を掴まれていない方の手でバシッと叩く。

「ごめんごめん、いや、さ、さゆちゃんかわいいなぁと思って。」
「はぁっ?!」

顔を上げた白澤さんはニヤッとイタズラっぽく笑った。

「さゆちゃんさ、嬉しいんでしょ?」
「は?!」
「でも怒ってた手前素直に喜べないんでしょ?」
「そんなわけ…わっ!」

ゆっくりと優しく床へ倒れ込まれたかと思えば、再び甘えるように肩に顔を伏せてくる。

「図星だね〜かーわい〜」
「図星じゃない!!!」



図星です。





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