第10章 求めるもの
白澤さんを胸をグッと押しはがす。
「帰ってください!!」
「ええっ?!急に?!」
「急にじゃないですよ!このバカ!!」
急じゃない。
ていうか急に来たのはそっちだし!
恐怖で思わず吹っ飛んでしまったけれど私は確かに怒っていたのだ。怒っていたというか、ショックを受けていた。
『あのさ、僕と結婚しない?』
喧嘩中に電話があったかと思ったら突然のプロポーズ。
でも、そのあまりの軽さに、私と付き合う前、いや付き合った後もか、
「君今フリー?なら僕と付き合わない?」「ねぇ今日暇?僕とこれからお茶しない?」
そんな風に女の子の手を取り声をかける白澤さんの姿が浮かんだ。
まぁ、そうだよね…
白澤さんにとってはプロポーズくらいそれと同じようなものなのだろう。
私は特別だと言われ自惚れていたんだ。
別にプロポーズくらい誰に言ってても、白澤さんなら充分あり得るし、私と出会う前だと思えばどうとでもないというか仕方ないんだけど…
でも…
でも……!
「どうせ…」
「え?」
「どうせ誰にでも言ってんでしょ?!もう白澤さんなんて知りません!!バカ!この女好き!!!バカ!」
「バカって二回言われた…!ってそうじゃなくて!違うから!」
バシバシと肩を叩いていた手を掴まれる。
腰にはいまだ、反対の手を回されたまま完全にホールドされている。これじゃ逃げるに逃げらんない。
「さゆちゃん、僕の目見て。その事ちゃんと言いに来たんだ。」
「嫌です。」
「あーーーもうじゃあこのままでもいいから!聞いて!僕はさゆちゃん以外にプロポーズなんてした事ないし、結婚しようなんて思ったのも言ったのも君が初めてだよ!!」
「……えっ?」
思わず白澤さんを見る私はきっと間抜けな顔をしていただろう。