第9章 どんぐりの背比べ
「でもなんか意外でした。鬼灯様、変に思い切りの良いところあるから、自覚したらすぐに告白とかするもんかと思いました。」
さっきとは別の種類の日本酒を煽る鬼灯様にそういうと、一度考えるように目をそらしたが、それはすぐにまたこちらを向いた。
「まぁ、一応。私も恋人のいる相手には慎重にいこうと思いまして。」
「はんっ!僕は別に構わないよ!!告白して玉砕しろ!!!」
「喧嘩中の身でよく言うな。」
やはり鬼は酒に強いのか。それとも白澤様が弱すぎるのか。この場合は間違えなく後者だろう。
そんな二杯目で軽く出来上がってる我が上司に鬼灯様が鋭い視線を向けた。
「…本当に、私が告白しても良いんですか?」
「な…なんだよ!なんだかんだフラれるのがこわいんだろ?!」
「いえ、それは前提として覚悟していくから別に構いません。ただ、私が一度告白したら、どこであろうと貴方がいようと会うたびにひたすら口説きにかかりますよ。」
そう、切れ長の目にまっすぐ見つめられて、自信満々にジョッキを掲げていた白澤様もピタッと動きを止める。
あー…
さゆちゃんがどうかはわからないけれど、というか現代の女の子もそうかは知らないけれど、女性は推しに弱いっていうよな。
それに相手は鬼灯様だ。
「良いですか、覚えておいてくだい。もし貴方と彼女の関係に隙ができたり、私の気持ちが露見した場合には一気に畳み掛けます。貴方と別れるまで。」
「〜〜っ僕は何があっても絶対別れないし!隙だって作らないからな!!!」
「2回目だけど喧嘩中の身でよく言うな。」
「〜〜〜〜っっ!!」
アホ神獣はじゃあどうしたら良いんだよぉ〜〜!!と机に突っ伏す。散々色んな女の子を口説いておいて1人の子を止める術も知らないあたりが本当流石だな。
「別れたくない…絶対別れない。」
ぶつぶつ言い始めたからそろそろ酒を没収しよう。明日が面倒だ。
そう思って手を伸ばした時だった。
「そうだ。」
「うぉっ」
急に白澤さんがむくりと起き上がったため思わず手が止まる。
「結婚しちゃえば良いんじゃない?」