第9章 どんぐりの背比べ
「腕を引いて…ただけです。」
「お前わざとだろ!!!それだけじゃないだろう?!」
ぎゃんぎゃん騒ぐ白澤様を横目に鬼灯さまは二杯目を注文し始める。あ、俺はハイボールで。
「でもそれこそ嘘下手なさゆちゃんがからかわれただけっていうし、そんな気にすることじゃないと思いますよ?」
「気にするよ!!さゆちゃんにその気はなくても他の男にちょっかい出されるなんて!」
「さゆちゃんがいるのに他の女の子に手出す方が気になると思いますけどね。」
「…っ」
この機会だ。常々思ってることを言ってやろう。
「桃タローくんは知らないから!!こいつが…っ!!」
立ち上がり、鬼灯様を指差したところで白澤様の動きが止まった。
「…おい。言って良いか…あれ」
「はい?」
「いやお前が…」
「ああ、桃太郎さん。」
「?何でしょう。」
白澤様がぎこちなく口を開いたかと思えば、察した鬼灯様がこちらへ向く。なんだろう改まって。
「私、さゆさんのことお慕いしているんです。」
「はぁっ?!」
「お前…そんなあっさり…」
「この話題になるとは思ってたんで考えてたんですけど、桃太郎さんからそれとなくさゆさんに伝わってさゆさんが私を意識し始めるのもアリかと思いまして。」
「桃タローくん絶対誰にも言っちゃダメだから!!」
白澤様がなんでこんなにワーギャー言うのかようやく合点がいった。きっとこの間上の空になっていたのもこれが原因なのだろう。あの日、白澤様は閻魔殿から帰った後だったし…
それにしても鬼灯様が恋敵……
「……白澤様…がんばってくださいね…」
「既に哀れんだ目で見ないでよ!!頑張るよ!!」