第9章 どんぐりの背比べ
「で、なんでさゆちゃんは怒ってるわけ?」
日本酒を煽りながら白澤様が隣の俺に目を向けてくる。なにも考えてないのか考えたけど出てこなかったのか。とりあえずこと女性に関しては勘のいいこの男もさゆちゃん相手だとそれが鈍るらしい。
「白澤様、さゆちゃんにもらったチョコ鬼灯様に自慢しに行ったでしょう?」
「行った。」
「その時通りがかりの獄卒にも自慢してたでしょう。」
「した。…ってまさかそれ?!そんなこと?!」
「そんなことって言いますけど、あんた先日お触り禁止になった原因忘れたんですか?」
「あっ」
ここまで言わないとわからないのか。
鬼灯様とため息が重なる。
「え〜いやでも今回のはキスとかじゃないしチョコくらい…」
「というかさゆさんはお触り禁止してまでしたのに結局貴方が何も反省してないことに怒っているんだと思いますよ。」
「…っお前に言われなくても分かってるよ!!」
「ほ〜〜〜〜〜〜ぉ?」
「はいはい睨み合わない!!」
パンパン!と手を叩き身を乗り出す2人を座らせる。
この2人、気をぬくとすぐにメンチを切るな。一昔前のヤンキーでもあるまい…
「とりあえず今回の事は白澤さんから謝ったほうが良いと思いますよ?」
「……わかったよ…」
おや?思ったより素直。
ということは、この件はこれで解決?
ということは…
「じゃあ、これでここはお開きに…」
「待った!!!」
店に入ってから10分。飲み物も食べ物も必要な分は頼んだし、さすがに早いとは思うが、この空間から脱したいと思ったが、それは白澤様に遮られた。
「僕が本当に聞きたかったのは違うんだ。おいお前、さゆちゃんになんかしたろ?何したんだよ?」
「はい?」
「何もされなかったか問い詰めたら「からかわれただけ」ってそれだけ言われたんだよ!」
「あー。さゆさん、嘘つけないんですね。」
あぁ、白澤様が言っているのは今朝の会話のことか。