第9章 どんぐりの背比べ
そんなこんなで朝からずっと、貧乏ゆすりが止まらない。
さゆちゃんはと言えば「もういいです!私は今日は外回りしてきます!」と例のごとく桃タローくんを引き連れて勝手に出て行ってしまった。
正直、冷静になるためにも距離があいて良かったかもしれない。
でもきっと、こんな時だってのに彼女はあいつの所へ行ったはずだ。行くからこそ桃タローくんを連れてったんだろうけど…
トントントントン。
正直、僕も言いすぎたかもしれない。
彼女にその気がないのは充分にわかっている。
でも、だからと言って無防備すぎるのも困る。
しかも相手があの鬼だ。
「あーーーーっもう!!」
とりあえず桃タローに電話をかけようと携帯に手を伸ばした時だった。
僕が触れる直前、ピロピロンとそれが鳴る。
他とは違う着信音。
僕が音を変えている相手なんてただ1人だ。
「………もしもし、さゆちゃん…?」
『バカ神獣。私今日はお香さんのとこに泊まりますから。』
「はぁっ?!」
おそるおそる出た電話から聞こえた第一声がそれだった。
怒鳴るでもない。ただ低い声で淡々とそれだけ言われたはお触り禁止を出した時と同じ雰囲気を纏っている。
なんかこれ出て行く前より怒ってるよね?
「ちょっと待ってよ、なんで急に…」
『もう自分で考えてください。明日有休いただきます。じゃっ。』
ブツン!と一方的に電話を切られる。
ってか突然有休って!!!元々休みなんてあるのかないのか適当だけども!
慌ててさゆちゃんに掛け直すが出てくれない。
「くっそぉ!!!」
そうとなれば桃タローくんへ電話をかける。予想していたのだろう、こちらはすぐに出てくれた。
『はいどうも。』
「桃タローくん!スピーカーにして!!さゆちゃんと話すから!!」
『スピーカーにしなくても声漏れまくってますよ…ってか多分無理ですよ。手でバツ作ってます今。』
「はぁ〜〜?!」